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ヴァスクス;ムジカ・ドロローサ/カンタービレ 他 [ヴァスクス]

ヴァスクス作曲;<ムジカ・ドロローサ>他
Tovijs Lifšics/ラトヴィア・フィルハーモニー室内管弦楽団他
(独WERGO WER6220-2)
苦い。とにかく苦い。
バルト(バルト諸国の意)の心情表現とはこういうものかと思わせる苦さである(私見だが)。
ちなみに、指揮者の名前はなんと読めばいいのだろうか・・・
ラトヴィアの作曲家ヴァスクス(1946~)は、恐らく今のところまだマイナーな存在ではないかと思う。今回紹介するのは3曲目に収録されている<ムジカ・ドロローサ>。1983年に書かれており、意味は「悲しみの音楽」。

年代から言っても現代音楽のカテゴリに入るのだろうが、そのカテゴリによくありがちな意味不明な和音やリズムによる難解さは全くなく、寧ろ聴きやすい作品だ。
曲は静寂の中、低弦の蠢きに始まり、間もなく現れる旋律(果たして旋律といえるかどうか)は標題どおり悲しみの音楽という感じだが、何か違う。音色は絶えず冷たく、常に思索的に動く。明るい光が差し込む瞬間は一瞬もない。その後テンポが上がり、緊張を失うことなく、息長く徐々に増殖するかのように音量を増してゆき、下降音形を伴う特徴的な部分などいろいろやりながら身をよじるかの如きフォルテシモへと昇り(敢えてここではこの字を使いたい)詰めてゆき、気を失ってしまったかのように減退してゆく。
再び静寂。沈黙。別世界に入り込んだかのよう。
また低減が蠢く。
そしてそれはやってくる。チェロ(と思う)の独奏とそれに続く高弦の旋律。最初は静かに、やがて次第に音量を増し最後まで歌いきり、息絶える。
苦い。
直前までのフォルテシモの後、最後の最後(と言っても全体の3分の1くらいあるけど)に歌われるこの部分こそが実はこの曲のクライマックスなのではないかとさえ思うが、ラトヴィアの演奏家による、この華やかさを全く伴わない(西洋のオケがやれば華やかになるはず)、抑制と冷たい感触を失わない表現(レーベルのトーンキャラクターもあると思うが)に接するとき、一般的にポピュラーな世界で聴かれている音楽とは異質のものを感じる(これを苦いというふうに私は感じるのだろう-表現として相応しいとは思わないけれども)と共に、ラトヴィアというよりも永らく他国の支配を受けてきたこの地域の歴史にまで思いを馳せることになる。
尚、このディスクには他に<カンタービレ(1979)><メッセージ(1982)><弦楽のための交響曲≪声≫(1991)>が併録されているが、これらの併録曲も劣らず魅力ある作品である。曲・演奏共に録音数の少ないこれらの作品の最も充実した名盤である。

タグ:ヴァスクス
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